8.思惑の立体交叉

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 同時に、エニアックはペダルを踏み込み、スロットルを全開位置へ。  たちまち、ジャグリオンはホバー走行を始め、敵地である橋の向こうへと渡って行った。  時を同じくして、こちらは── 「……」  気を失っていたのか。  隆義は、ぼやけた視界の中でそう思いながら、その眼を開いた。  見慣れない天井と、灯りがついていない蛍光灯、周りはカーテンで閉め切られているようだ。 「!」  上体を起こそうとして鳩尾に痛みが走り、隆義は顔をしかめて手を当てる。  が、そこに違和感を感じ、何かと思いながらシャツをめくったが──。 「湿布……?」  分厚いガーゼとも、湿布とも思える物。  それが、隆義の胸と腹の間……鳩尾のあたりに貼られていた。  さらにそれを抑える右腕にも包帯が巻かれている事に気付き、隆義はまた、深くため息をつく。  ──またケガかよ。  最も、体に負ったダメージは、ある意味で「身から出た錆」なのだが。  視界はまだぼやけているが、とりあえず意識が回復した今、あれからどうなったのかが気にかかる。そう思った隆義は、不安を感じつつもカーテンに手を触れた。  シャッと音を立てながら、カーテンを小さく開く。  午後の陽気を顔に浴び、隆義は思わず目を瞑った。片目を薄く開こうとするが、目が慣れるまでには少しかかりそうだ。  そこに、カラカラと静かに扉が開く音が聞こえ──反対側のカーテンが、大きく開く。 「……?」  一体誰だ──隆義はすぐに音の方向へ顔を向ける。  顔が強い光から逃れた事で、幾分か目が楽になった隆義は、ようやくその寝ぼけ眼を開く事ができた。 「こころちゃん、来てー。彼、意識が戻ったのー」  目の前に居る髪の長い少女はそう言うと、引き戸の外へ向かって手招きする。 「奈穂ちゃん、ありがとー。菊花さん、こっち!」  返事が聞こえた直後、隣の部屋から足音が二人分。かなりの急ぎ足だ。 「隆義ー!」 「たかよし、だいじょうぶね!」  いや、三人だ。  菊花の後ろから、きゅーちゃんが顔を覗かせている。 「姉ちゃん……(それに、きゅーちゃん)」  半分放心状態のまま、隆義は呟いた。
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