桜並木の伝説

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「あの子、迷子ですよね?」 そう言うと、ボクの視線の先を見て優花さんが言った。 「そうね、でも大丈夫よ、これだけ大人がいるのですから、誰か助けるはずよ」 「そうですね、でも…」 ボクが女の子の方を気にしていると、つないだ手を少し持ち上げて優花さんが言った。 「コレ、続けましょ、それとももう終わりにするの?だったらアタクシ帰りますけど」 「やっぱり放っておけません、小野寺さん、今日の埋め合わせは何かしますので」 そう言うとボクは握っていた手を離し女の子の方へ駆け出した。 その子の前まで来るとしゃがんで目線を合わせた。怖がらせないようにできるだけ やさしく尋ねた。 「お譲ちゃん、誰か捜してるの?」 鼻声で女の子は答えた。 「グス、…ママ」 「そうか、ママとはぐれちゃったんだ」 彼女はうなずいた。ボクは並木通りの先の方を指差して言った。そこに駅前交番があるのだ。 「この先におまわりさんがいるんだ。おにいちゃんとそこへ行ってママを捜してもらおう」 彼女は涙を手で拭いながらうなずいた。 「はぐれるといけないから、おててつないでいこうね」 そう言ってボクが手を出すと、ボクの人差し指を握ってきた。小さな手だからそれしか 握れないようだ。普段もそうしているのだろう。 ボクは彼女に合わせてゆっくりと歩いた。
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