0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの子、迷子ですよね?」
そう言うと、ボクの視線の先を見て優花さんが言った。
「そうね、でも大丈夫よ、これだけ大人がいるのですから、誰か助けるはずよ」
「そうですね、でも…」
ボクが女の子の方を気にしていると、つないだ手を少し持ち上げて優花さんが言った。
「コレ、続けましょ、それとももう終わりにするの?だったらアタクシ帰りますけど」
「やっぱり放っておけません、小野寺さん、今日の埋め合わせは何かしますので」
そう言うとボクは握っていた手を離し女の子の方へ駆け出した。
その子の前まで来るとしゃがんで目線を合わせた。怖がらせないようにできるだけ
やさしく尋ねた。
「お譲ちゃん、誰か捜してるの?」
鼻声で女の子は答えた。
「グス、…ママ」
「そうか、ママとはぐれちゃったんだ」
彼女はうなずいた。ボクは並木通りの先の方を指差して言った。そこに駅前交番があるのだ。
「この先におまわりさんがいるんだ。おにいちゃんとそこへ行ってママを捜してもらおう」
彼女は涙を手で拭いながらうなずいた。
「はぐれるといけないから、おててつないでいこうね」
そう言ってボクが手を出すと、ボクの人差し指を握ってきた。小さな手だからそれしか
握れないようだ。普段もそうしているのだろう。
ボクは彼女に合わせてゆっくりと歩いた。
最初のコメントを投稿しよう!