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交番に着くと女の子の母親がいた。子供がいないことに気がついたが、どこではぐれたか
わからず、交番に駆け込んだとのことだった。
何度もお礼する母親と女の子を手を振って見送っていると後ろから声がした。
「は~せ~が~わ~」
いつになく”お怒りモード”の優花さんだった。どうやらボクと女の子が歩いていく後ろを
ずっとついてきていたようだ。
優花さんはボクの前を左右に行ったり来たりしながら説教を始めた。どう見ても先生が
生徒を叱っているようだった。
「だいたい、今日のことは長谷川が言い出したことよね」
「すみません」
「それなのに、アタクシ一人を置き去りにするなんて、一体どういうことなの!」
「ゴメンなさい」
「自身の用事より迷子を優先するなんて…」
「本当に申し訳ありませんでした」
ボクは目を瞑って頭を下げた。ふと目を開くと優花さんの両足が見えた。
ゆっくり頭をあげるとボクの前に彼女が腕を組んで立っていた。
「でも嫌いじゃないわよ、そういうの」
優花さんはやさしい笑顔でそう言った。
(カワイイ!)
そう思いながらしばらくジッと見つめていたら、優花さんの頬がすこし赤くなった。
ハッとしたように彼女は顔を背けて言った。
「長谷川は”ロリコン”なの?」
唐突な問いに慌てて答えた。
「ち、違いますよ」
「じゃあもう1回最初から始めましょう。そうでないと長谷川、さっきの女の子と
『結ばれ』ちゃうわよ」
そう言って優花さんは僕の手を握ってきた。そしてボクたちは並木道の方へ
歩いて行った。
心地良い風に吹かれて花びらが舞っていた。
【終】
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