サクラは特別

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「ゆーくん!ゆー、起きてーっ電車行っちゃう!!」 「もうとっくに起きてるよ。寝坊したのはお前だろ…」 「行こっ、早く行こう!!」 「引っ張るな──」 「おばさん!行ってきまーすっ」  今日は3月3日、ひな祭り。でももう高校生にもなった私には、あんまり関係のない行事。  だけど、田舎に居る私のおばあちゃんが桜餅を作ってくれたみたい。ちょうど日曜日だし、これからゆーくんと一緒に行く…はずだったんだけど。 「ま、間にあわなかった…」  ぜぇぜぇと肩で息をする私と対称的に涼しい顔のゆーくん。次の電車は一時間後だな、なんて冷静に告げている。 「そ、そんなに空くの!?」 「むしろ一時間後にあってよかったよ。あそこは本当に田舎だからな、もっと本数少ないと思ってた。じゃ、行くか」 「え、どこに?」 「お前、朝飯食ってないだろ。お腹空いてるんじゃないか?」  優しい。  …って言うのが憚られるくらい素っ気ない言い方だけど、ゆーくんはいつでも、ちゃんと私のことを気にかけてくれてる。  そう、優しいんだよね、本当は。
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