0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「あ!ゆーくん見て、桜だよ!キレイだね」
「だからあれは梅だって。いい加減覚えろよ」
「むしろ、よく区別つくよね~」
「まあ…昔から桜、よく見てるし」
「ゆーくんって桜好きだよね!よく写真に撮ってるし」
ハニートーストを食べ終わって駅へ戻る道。桜…じゃなくて、梅の花がいっぱい咲いてる。きれいだな~。
写真部であるゆーくんは、いつもの一眼レフで何枚か写真を撮っていた。
「梅の花ってかわいいよね。小さくてまるっこくて、いい香りで」
「お前さ、桜じゃなくて梅が好きなんじゃない?」
「えー、それとこれとは違うよ!桜は同じ名前だから、なんか特別感があるっていうか」
「と言っても、漢字は違うだろ」
「それはそうだけど!もー…」
私の名前はサクラ。いとへんの紗に倉って書いて紗倉。だけど幼い頃は漢字なんてわからないから、おんなじだって思うじゃん。
おっきくてキレイなサクラと、おんなじ──そう思ったら、とたんに自分の名前が宝物のように感じたの!
「それからは私、自分の名前好きなんだー!」
「…あっそ」
因みに私の苗字は蔵谷。蔵谷紗倉、それが私の名前。保育園に入ってすぐ、くらくら~って男の子にからかわれて、何でこんな名前なのって思った。
今思えば些細なことだし、男の子達も悪気はなかったんだけどね。でも小さいときの私は、引っ込み思案で怖がりだったから泣いちゃって…。
最初のコメントを投稿しよう!