サクラは特別

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「あ!ゆーくん見て、桜だよ!キレイだね」 「だからあれは梅だって。いい加減覚えろよ」 「むしろ、よく区別つくよね~」 「まあ…昔から桜、よく見てるし」 「ゆーくんって桜好きだよね!よく写真に撮ってるし」  ハニートーストを食べ終わって駅へ戻る道。桜…じゃなくて、梅の花がいっぱい咲いてる。きれいだな~。  写真部であるゆーくんは、いつもの一眼レフで何枚か写真を撮っていた。 「梅の花ってかわいいよね。小さくてまるっこくて、いい香りで」 「お前さ、桜じゃなくて梅が好きなんじゃない?」 「えー、それとこれとは違うよ!桜は同じ名前だから、なんか特別感があるっていうか」 「と言っても、漢字は違うだろ」 「それはそうだけど!もー…」  私の名前はサクラ。いとへんの紗に倉って書いて紗倉。だけど幼い頃は漢字なんてわからないから、おんなじだって思うじゃん。  おっきくてキレイなサクラと、おんなじ──そう思ったら、とたんに自分の名前が宝物のように感じたの! 「それからは私、自分の名前好きなんだー!」 「…あっそ」  因みに私の苗字は蔵谷。蔵谷紗倉、それが私の名前。保育園に入ってすぐ、くらくら~って男の子にからかわれて、何でこんな名前なのって思った。  今思えば些細なことだし、男の子達も悪気はなかったんだけどね。でも小さいときの私は、引っ込み思案で怖がりだったから泣いちゃって…。
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