書生孔明、人生を決める

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 「世評に高い劉玄徳公、どのような御仁とおもわれる?」  顔にどこか童子臭さの残った、司馬徽門下の学徒たちは、戦火に炙られ戦塵に咽ながらも乱世を生きのび、ここ襄陽に逃れ新野を治める身近な英雄の人物評に飽きることがない。 時勢が沸騰している。  光武帝は、人との繋がりを大切にし寛容を旨として、後漢王朝をうちたてた。まごうかたなき英雄だった。しかし、いきおい外戚は厚遇され絶大な権勢を持つようになり王朝の後半期は外戚の跳梁と、外戚の抑圧が成功してからはその功労者である宦官の跋扈に悩まされることとなる。  やがて宮中の腐敗は黄巾の乱という外患を誘発し、地方豪族たちが保持する軍事力を頼みに銘々割拠して王朝などそっちのけで天下の覇を競うという、混迷をきたしていた。  しかし、日月が欠けてもいずれは満ちるように、今では多くの群雄は淘汰され、混迷のうちにあっても少しずつ収束の萌芽をのぞかせるまでに来ていた。  明日をも知れぬ世であることに変わりはないが、それゆえに誰が時代を動かすのかという人への興味がどこでも熱量を持って渦巻いていた。
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