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自分の想いを言葉にしてはいけない。
無言で二人はそっと手を重ねた。
「こんな風にさぼって。優美が今頃探してるよ」
咲が言葉に笑いを含ませて言うと、左京は不機嫌そうに重ねた手に力を込めた。
「……哲だって多分咲を探してるだろ」
お互いに、黙る。
「本当に、私は左京を嫌いじゃないの」
涙でもこぼせればいいのにと、思うけれど、それでも咲は笑顔だった。
「いっそ嫌いになれたらよかったのにな」
苦いものが混ざった左京の声が返ってくる。
強く手を握り、背中のぬくもりを感じた。
それ以外は何もなかった。
「咲」
左京に背中越しに呼ばれる。
咲は左京に求められている言葉を口にした。
「ねえ左京。私達は友達よね」
私達はギリギリのバランスを壊せない。
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