1.氏ねじゃなくて死ね!

1/2
前へ
/20ページ
次へ

1.氏ねじゃなくて死ね!

数十分後、そこには拳をさする俺と、頭を抱えてうずくまる小太りの少年―――『勇者』佐倉桜の姿があった。 「なるほど、大体理解した」 佐倉の脳天に見舞った拳骨にふっと息を吹きかけながら、俺は言う。 「つまり、俺もお前も元の世界から『勇者』として呼ばれた。だからこの世界を救うまではもどれない、と」 「ハイ、ソウデス……」 「はぁ、もう……」 改めて認識すると余計に腹がたってきた、もう一発殴ってくれようか。 「ああ、やめて、やめて!! 拳振り上げないで!! 『ファイター』の拳とかわりとマジでシャレになんないから!!」 「だれが俺をこの世界に呼んだんだっけー?」 「僕! 僕です!! すんません薫なんて名前だからてっきり可憐な美少女かと思っ……あー!! 困ります!! 拳は困りますお客様あああああ!!!!」 誰がお客様だという突っ込みと共に、俺は佐倉の頭に本日二度目の拳骨を見舞った。 断っておくが、初対面の人間を殴るのは生まれて初めてである。 でも、どう考えてもこいつが悪いのだ。 俺は満と一緒に普通に帰路につき、明日も普通に学校に行く予定だった。 それをこいつが『この世界』――異世界『チェリーブラッサム』に召喚したのだ。 世界が危ない、俺がいないと危ない。 そういうことなら、まあ、まだわかる。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加