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1.氏ねじゃなくて死ね!
数十分後、そこには拳をさする俺と、頭を抱えてうずくまる小太りの少年―――『勇者』佐倉桜の姿があった。
「なるほど、大体理解した」
佐倉の脳天に見舞った拳骨にふっと息を吹きかけながら、俺は言う。
「つまり、俺もお前も元の世界から『勇者』として呼ばれた。だからこの世界を救うまではもどれない、と」
「ハイ、ソウデス……」
「はぁ、もう……」
改めて認識すると余計に腹がたってきた、もう一発殴ってくれようか。
「ああ、やめて、やめて!! 拳振り上げないで!! 『ファイター』の拳とかわりとマジでシャレになんないから!!」
「だれが俺をこの世界に呼んだんだっけー?」
「僕! 僕です!! すんません薫なんて名前だからてっきり可憐な美少女かと思っ……あー!! 困ります!! 拳は困りますお客様あああああ!!!!」
誰がお客様だという突っ込みと共に、俺は佐倉の頭に本日二度目の拳骨を見舞った。
断っておくが、初対面の人間を殴るのは生まれて初めてである。
でも、どう考えてもこいつが悪いのだ。
俺は満と一緒に普通に帰路につき、明日も普通に学校に行く予定だった。
それをこいつが『この世界』――異世界『チェリーブラッサム』に召喚したのだ。
世界が危ない、俺がいないと危ない。
そういうことなら、まあ、まだわかる。
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