2.だって可愛いからしかたない

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「やったー!」 「これでまたさくらんぼがおなかいーっぱいたべられるですね!」 「ウィザードさまもやられずにすむぞー!! わーい!!」 小さな小人たちがぴょんぴょん跳ねる姿を見て、俺は佐倉の言葉を否定しようにも否定できなくなってしまった。 「ふひひ」 純朴そうな小人たちのど真ん中で一人ほくそ笑む小太り。 クソっ、図られた。    *** 「おおっ」 少し時間が経って、俺は高台から小人たちの街を見下ろしていた。 「どうだ、すごかろう」 誠に不快なことに、隣には踏ん反り返っている豚野郎の姿がある。 そう、誠に不快なことに。 「なんかひどいこと考えてるだろお前!!」 「さぁ? ……まあ、たしかにこれはすごいな」 この世界、『チェリーブラッサム』は大きな桜の木の上に作られている。 とてつもなく太く大きな枝の上に作られた、小人たちの街。 これは元の世界では見れない光景だ。 「ふふん、そうだろうそうだろう」 「なんでお前が威張るんだよ」 軽く豚野郎の頭に平手を見舞ってから、俺は再び進行方向に向き直る。 俺、もとい俺と豚野郎こと佐倉はこの世界の敵である”マイマイガー”なる怪物を倒すため、世界の桜を上っている。 「そういえば、気になってたんだけど」 「ん?」 「『ファイター』とか『ウィザード』とかってなんなんだ、ゲームの職業みたいなもんって解釈であってんの?」
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