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0.こういうBLが好きなんだよな
花の香りがかすかに鼻をついた。
夜、ここは地元でも有名な桜の名所。
俺、百瀬薫は友人で同じ部活の美月満と帰り道を歩いていた。
「すっかり春だよな」
道ばたの桜を見ていた俺は満のほうに振り向く。
男としては低身長な俺と対照的に、満は背が高い。
必然的に見上げる形になる俺の方をちらりと見て、満は目を逸らしながらぶっきらぼうに
「ああ」
とだけ応えた。
満は無愛想なやつだ。
もともと目つきも悪いから周りからいろいろ誤解されやすい、あとメガネだ。
俺はそんな満が嫌いじゃない。
「花見とかしたいよな」
「二人でか」
まじめに聞いてくる満。俺はそれが少し可笑しくて、笑いながら答える。
「それじゃさびしいでしょうよ」
「なら行かん」
「わがままだねえ、お前は」
「他のやつらは慣れん。気まずい」
顔を逸らしたままの満。
こういうところが他人に誤解を与えるのだが、俺はなんだかこいつのこういう所が嫌いになれない。
「じゃあ――」
言い掛けたところで、強い風が吹いた。
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