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そんなの言われるまでもなく俺だってわかってる。だけど、俺だろうと誰だろうと、スーツを着ていたら見た目は変わらないはずだ。
「外行ったら写真撮ってやるぜ?」
「いいよ。どうせスーツ来て出たら顔なんてわかんないし」
「薄情だなぁ、お前」
そう言いながらロブは俺のスレートPCに画像を転送してくれた。
「今なら特別サービス、超光速回線に乗せてやれるぞ?」
「マジ?」
「おう、お偉いさん方、多分色々もめてんだろ。もっと情報収集するか、もう跳ぶかで」
『今』ここで観測している結果から、12年後を予測して跳ぶ。蓄積した情報から予測するしかない以上、判断が難しいのは判るが、待たされるこっちとしては退屈極まりない。行けば『現在』の情報を採取できるのだから行ってしまった方がスッキリするのになんてことを無責任にも考えてしまう。だけど、次のワープをしたら、俺たちは地球から16光年離れた星に行く事になる。ますます遠くなるな、と苦笑いがこぼれた。
「送るか?」
「いや、いいよ。普通に送る」
メールに写真を添えて送信ボタンをタップする。
これでいい。
4年後、君にこの写真が届く時。きっとこの殺風景な荒野にはノイズの桜吹雪が舞っているはずだから。
君にケンタウルスの、桜を送るよ。
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