サクラ 舞う 宙

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『〓かしい写〓 見つ〓た〓!!』  そのノイズだらけのメールを受け取ったのは、この星でのサンプルの回収もだいたい終えて次はどうするのか上からの指示を退屈しながら待っていた時だった。  この4光年なんて距離のある中で連絡を取り合うなんて、端っから現実的な話じゃないのだ。互いに互いの事を気が向いた時に一方的に報告する程度が良い。そう、俺と彼女みたいに。  届いたのは中学の入学式の時の写真と懐かしい街の写真。どちらの写真も桜の木が写っていたが、データは超長距離転送の間に減衰し色褪せて、花吹雪のようにノイズが舞っていた。 「ロブ、この写真復元できる?」  隣に居たロブに呼びかけると「ぁん?」と退屈そうに視線を投げてきた。スレートPCをポートに置くと、プロジェクターから中空にノイズだらけの写真が投影される。 「お、若いねぇ。彼女か?」 「まさか。続く訳ない」  だよなぁと苦笑したロブに苦笑いを返しながらも、それでも彼女の心の片隅にまだ自分の居場所がある事が嬉しくなかったと言ったら嘘だった。  「んー、やっては見るけど減衰によるノイズだから期待すんなよ」     
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