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※ 三月に生まれたせいか 子供のころからこの神秘的な桜の近くで育ったせいか 私は桜の季節が一番好きだ。 桜の咲いている時の記憶は他の季節よりも濃厚に残っている。 彼女と出会ったのもこの季節だ。 桜の季節になるとまた彼女に会えるのだはないかと期待してしまうのだ。 彼女と初めて出会ったのはまだ幼児舎に入って間もない歳のころだった。 家以外を知って、私の世界は少し広がってみんなと自分は違うことに徐々に気付いていたころで、周りのくれるやさしさや笑顔が私ではなく私の家柄に向けられてるのだと気付き始めていた時だった。 幼児舎の先生は生徒を客人のようにもてなすし、生徒同士はお互いの親の職業を知っていた。嘘くさい笑顔や陰口に辟易(へきえき)していた。 家の名で優遇されることもあれば虐めにあうこともあった。 蝶の羽ばたき程のことでも噂が立つ。だから他人とは距離をとることを徹底的に教えられた。 そんなある日 庭の桜の木のところで、自分と同い年くらいの少女と出会った。 彼女は愛想笑いをすることもなく敵意をもっている様子でもなく、じっとりとこちらを見つめていた。 私はそれが新鮮で縁側から飛び降りて裸足のまま少女に駆け寄り「ねぇ、あそぼ」そう言って誘った。 彼女は物知りでよく草木の名前を教えてくれた。 枝にとまる鳥の名を教えてくれた。
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