第1章 座敷牢

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第1章 座敷牢

 初めての出会いは小さな村の座敷牢だった。 鬼の子がいるという噂を聞き、眉唾承知で見に行った。 渋る村人を説き伏せてようやく通してもらった座敷牢に凛はいた。 白い髪、灰色の瞳、紙のように白い肌。 鬼子と言われるのも無理はない容貌に“なるほど”と将治も納得をした。  村人とともにやって来た彼を凛はギラリと睨みつけた。 「近寄るとなにするかわからんから気ぃつけな」  案内してくれた村人がそう忠告した。 「ほぉ、なるほど、これが鬼子か」  歳は12、3ぐらい。やせ細り、目ばかりが目立つ。 どんな扱いを受けているかは推して知るべしだった。 「おもしろい」  ニヤリと将治は笑うと村人に向き直った。 「こいつはおれが引き取ろう」 「は? なに言っとんだ、いきなり」 「どうせ祟りが怖くて殺すに殺せないのだろう?  だったらおれがこいつを引き取ってやるというのだ」  思ってもみなかった言葉に村人は呆然としていた。 「こいつの食い扶持をひねり出すのも楽ではあるまい?  厄介払いができておまえたちにとっても好都合だろう」 「だけんど……」
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