第3章 離れ家

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 食事の時には縄を外してもらえた。  とはいえ、ちゃんと箸を使わないと将治に手を叩かれるので、イライラしつつの食事で、 とても楽しいものではない。  夜は夜で、また昨夜と同じようにされた。暴れて抵抗したが、 「諦めて慣れろ」  と、言って無理矢理押し通された。  凛にしてみれば一日中不愉快なことばかりだった。 それでも色々あって疲れ果て、将治の腕の中で泥のように眠りについた。  翌日の夕方に、結は着物を仕上げてきた。  花柄の小紋を着せられた凛は不機嫌そうに、 「こんな女みたいなベベはイヤだ!」  と、言い放った。 「みたい? おまえも半分は女だろう」 「半分は男だ! 女などになるつもりはない!」 「おれと暮らしていればおまえの役回りはどうしたって女だ、諦めて慣れなさい」 “諦めて慣れろ”  将治の言い分はそればかりだった。 「なんでおまえのためにおれが女にならないといけないんだ!」 「わたしだと教えただろう!」  またぶたれるのはイヤなのですぐさま、 「わたし」  と、言い直した。 「おれのためとかどうかじゃなく、成り行きで仕方がないだろうと言っているんだ」  凛は口をへの字にして将治を睨み返した。 「とにかく慣れなさい、いちいち逆らってもお互いにイライラするだけだろうが」  逆らおうが逆らわなかろうが、ここへ来てからイライラしっぱなしだった。 なんでこんなことになったんだろうと思いつつ、凛はそっぽを向いた。
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