0人が本棚に入れています
本棚に追加
その日、いつもの通り夕刻に来た将治に、
「こんな着物などいらない」
と、凛は言った。
「なんだ、いきなり」
「これはすごく高価な布だって結から聞いた、そんな高価な着物などいらない!」
将治は不機嫌そうな表情を浮かべた。
「おまえのためにわざわざ用意したんだ、文句を言わずに黙って着ていろ」
「そんな高価な着物などいらない! おまえや結と同じヤツでいい!」
「旦那さまと呼べと言ってるだろう」
今までも散々それは注意されていた。
「イヤだ!!」
凛は凛で、そのたびに突っぱねていた。
「とにかく、せっかくくれてやったんだからおとなしく着ていろ、
つまらないことでグズグズ言ってイライラさせるな!」
凛はすべてにおいて逆らうので、そのたびに衝突する。
全部にかまっていたら神経が磨り減るだけだった。
最初のコメントを投稿しよう!