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「なにを困ることがある、おまえたちにとっても願ったり叶ったりではないか」
自分一人では判断できないということで、全員が集まってどうするか協議を行い、
結局凛を将治に預けることにした。
凛は暴れまくり、両手を縛り上げられた格好で将治に引き渡された。
目と髪の色が変わっているというだけで、牙もなければ角もない。
単に多少毛色の変わった子というのが将治の考えだった。
自分の前に乗せて馬で自領まで戻る。まだ齢二六だが将治は一国の領主であった。
世は乱世で自領の平穏を保つのさえ一苦労な時節だが、それでもうまく治めていた。
自宅の裏山にある離れに凛を連れて行く。
座敷牢に閉じ込められたままだったせいで薄汚れ饐えた臭いまでするので、
とりあえず真っ先に風呂に入れることにした。
ところがツギハギだらけの汚れた服を脱がそうとするとバカみたいに暴れだした。
「おとなしくしろ! そんな汚れた体では座敷にはあげられんだろうが!!」
むやみやたらに暴れるので縄も解けない。
仕方なく破って服を脱がせ、湯船に突っ込んだ。
ガリガリに痩せて腕など骨と皮しかないような状態。
痩せて小さなせいで12、3にしか見えないが、実際はもっと上なのかも知れない。
十分体を温めてから次に体を洗おうとするとまた暴れ出した。
「じっとしていろ、いちいち暴れるな!」
怒鳴りつけてもまだ暴れるので、押さえつけて洗い始めた。
髪から流れ落ちる水は黒くなるほどで、体は垢と汚れがへばりついている。
どれほどの間あそこに閉じ込められていたのかと思うと胸が痛んだ。
暴れるのを押さえつけながら頭を洗い、体へと移る。
へばりついた汚れを落とすのはなかなか苦だった。
首から肩へと下りていき胴まで洗ってから、足先に移る。
足先から上に上がり、最後に肝心な場所となったときにまたバタバタと暴れ出した。
「おとなしくしろ、まったく面倒なヤツだな」
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