出会い

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 パートさんの言葉は嬉しかったが実際、奈美に会ったら、 「紗枝もそんなレベルまで下がったんだ」  などと言われると思うと悔しかった。  その日の日曜日は大忙しだった。  売り場の裏側に紗枝達の厨房があるのだが、売り場の下部に小窓があって そこから作業しながら商品の売れ具合が見えた。 ここからは客の顔は見えず腰から下だけが見えていた。  紗枝は商品のパックに必死だった、小窓を見ていたパートさんが、 「あれ、見てごらん、あの人犬連れて入ってるよ、ペット禁止なのにね」 「あれは盲導犬だよ、うちの店は盲導犬許可してんだよ」  男性社員が応えた。  紗枝はパックの手を止めずに小窓を見た。  ジーンズの下半身の横に犬がいた、静かに買い物を待っていた。
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