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「僕はたまにこの道通りますから見掛けたら声掛けて下さい」
紗枝はもう一度礼を言って足早に駅へと向かった。
傘を差すと雨が顔に当たらなくなり少し落ち着いた。
男物の黒い古い傘で骨が一本飛び出していた。
アパートに帰ると紗枝は服を脱ぎ捨てジャージに着替えてベッドに横たわった。
今日は朝から晩まで友達と町を歩き回り、食べたり飲んだり騒いだり、
毎日の事だが疲れを感じた。こんな方法でも疲れを感じると充実感らしきものを覚えた。
その中で印象に残ったのが学校帰りの道で会った青年だった。
中学生ぐらいの時に感じた妙に嬉しい懐かしい感覚だった。
次の日の日曜日、休みの紗枝は昼近くまで寝ていた。
目が覚めると留守電を聞く、いつも通りの友達のやる気のない
メッセージと母親の気丈な伝言だった。
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