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エレベーターのドアが開いたら先に乗り込むのは母以外の者だと決まっている。
先に乗り込んだらまず、各階の病棟を教える案内板の前に立たなければならない。
そうして急いで5階のボタンを押す。
5階はこの病院の最上階であるホスピス病棟だ。
怖がりな母は自分の癌の進行状況を知りたがらない。だから誰も教えない。
ただ『体のために入院するよ』とだけ伝えて、ここへは連れてきている。
56歳を迎えた母が病室でひとりになるのは嫌だと子供のように泣くので、仕事を休職した私が父に代わり母の個室で共に寝泊りをしている。
そんな生活が、もう2ヶ月つづいている。
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