花隠れ

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「今年もまたこの季節が来たか」 俺はゆったりと自分の枝に腰掛けて、幹にもたれながらようやく蕾を付けた枝先を見上げる。 「今年は少し遅い、かな?」 頭の後ろで両腕を組み、目線を上に上げると、どの枝にもぽつりぽつりと蕾が付き始めているのが見えた。周りの桜の木を見回すと、俺のように人の姿を取って自分の木に座っている奴、ぼーっと空を見上げている奴もいる。俺たちのように木が人の姿を取るには、木力(きりょく)がないと姿を保てない。木力は日光や雨からもらうこともあるが、一番多いのは人間のエネルギーだ。人間が俺たちの近くで喜んだり楽しんだりしているエネルギーを吸い取って、自分の木力として蓄える。花が咲き始めるにつれて徐々に木力も増えていくから、満開になった時は木力絶好調の時だ。俺がいるのは比較的大きな公園で、中心には広めの芝生があり、よく晴れて気持ちの良い日は家族連れやカップルで賑わっている。小さな池がいくつかあり、茶室やちょっとした花畑もあるから、これからの時季は人が増える。明日から気温が上がるようだし、俺たち桜の木が満開になる日もそう遠くはないだろう。
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