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後に残ったのは、彼女の甘い残り香とそれに混じった親友の匂いだった。
その日のことはそこからよく覚えていない。
蕾をつけた桜の木を見つめていたのか、それとも、部屋の中で奇声を上げて大暴れしたのか、どちらかだろう。
その日、初めて強く死を望んだ。
そのせいで、その夜中に発作が起こり、痛みと苦しみでのたうち回った。
そんな中で脳裏に浮かんだ映像が彼と彼女が獣のように交わる姿。
彼女も彼も狂気さを感じるほどに溺れていた。
彼女の白く透き通った肢体と彼の肥えた肉体がアンマッチしていた。
愛を囁き合っては狂気と思えるような交尾のシーン。
憎悪や嫌悪を覚えるより前にその姿を美しいと感じてしまっていた、
親友の荒い息、彼女の嬌声、ベッドの軋む音、
乱れ髪に、上気した肌、火照った頬に、潤んだ瞳。
そこに食らいつくハイエナという名の親友。
ああ、美しい。美しい。
壊れたように僕の心はその言葉で埋め尽くされた。
その日から僕は意識を失った。
ぼんやりとした灯籠の灯りに目が覚める。
土の匂いとアルコールの匂いが鼻につく。
ここはどこだ?
そんな疑問を抱きながら洞窟の中を進み続ける。
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