第一章

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長いようで短かった高校生活が終わる。 就職する人、大学に行く人、短大に行く人、専門学校に人。進路は人それぞれ。 友達とも離れ離れに。 いつも隣にいた。 これからも私の隣にいる。そう思っていた。あの時までは。 「俺、東京の大学に行こうと思う」 「え・・・そ、そうなんだ」 「汐莉は地元だったよな?」 「う、うん」 何も言えなかった。 “なんでもっと早く言ってくれないの!” 声に出して言いたかった。 言ったところで、離れた東京の学校に行く勇気はないから、何も変わらないけど。 幼馴染みの大志とは家が隣ということもあって、いつも一緒だった。 小学校、中学校、高校。そして、大学は別々でも、お互いいる場所は変わらない。そう思っていた。 けど、それも今日で終わってしまう。 そうならないために、私は今日ここにいる。 たぶん、私の思うようにはいかない。何となくそんな気はするけど、言わないで後悔するのはイヤだ。 「もう、神頼みしかないかな」 校庭の脇に立つ、一際大きな桜。 ここで告白すれば、付き合うことができる。 定番といえば定番だけど、今はそんな迷信にすらすがりたい。 「ごめん。遅くなった」 「そんな遅れてないよ」 もしかしたら、来ないんじゃないかと思った。 ここに呼び出すということは、そういうことだとわかっているだろうから。 「話って?」 「うん・・・」 普段なら、すらすらと言葉が出てくるのに、胸の鼓動しか出てこない。 ドクッドクッと、周りの雑音を掻き消すように大きな音が私の頭の中で木霊してる。 「あ、あのさ・・・わかる、よね?」 「まあ、なんとなくは」 ああ、頬を軽く掻きながら、困ったように微笑むその仕草もこれからは見れなくなるのかな。
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