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「本当に東京の大学に行くの?」
「行くよ」
「そっか。そうだよね」
「腐れ縁といえば聞こえはよくないかもだけど、小学校からずっと一緒で大学も地元で変わらないと思ってた」
「俺もそう思ってわ」
「でも、そうはならないんだよね。私、大志がずっと、ずっと好きだった。大学は別々で離れてしまうけど、今度は、幼馴染みから、卒業したい。大志の彼女になりたいの!」
顔が熱い。今、きっと真っ赤になってるだろうな。
大志の顔が怖くて見れない。早く応えてくれないかな。
1秒が5分にも10分にも長く感じられる。
「ごめん」
時間にすればたった数秒の間だけど、大志が答えをくれる。
「汐莉が嫌いなわけじゃない。これからは、簡単に会える距離じゃなくなるし。お互いやりたいことがあると思う。たとえ付き合ったとしても、きっとお互いの為にならないと思う。だから、付き合えない」
わかってた。
大志は優しいな・・・はっきり答えをくれる。
だから、好きになったんだよ。
「うん・・・ありがとう」
小さくて聴こえてないかもしれないけど、これが今出せる精一杯の言葉だよ。
「ごめん。先行くね」
返す言葉もなく、ただ私は地面を見つめる。
なんでだろう。大志との思い出が溢れ出てくる。
何とか顔をあげられると、大志の後ろ姿はどんどん離れて、校舎の中に消えて行った。
「・・・フラれちゃった」
神様のばか。
都市伝説のウソつき。
上手くいかなかったじゃん。桜の木のしたで告白したのに。
「ああー。空が碧い」
雨でも降ってくれてればよかったのに。
「もう、大志とは会わなくなるのかな。そんなのイヤだな」
涙は嬉しい時に流したかったな。
もう一度天を仰げば、神様のせいでも、都市伝説がウソだったせいでもなかった。
「なんだよ。一輪も咲いてないじゃんか」
桜が満開の頃に言えばよかったのかな。
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