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トイレから出られない事態 詳細
「船山さん…!!
すっっ、すいませんっ!そんなつもりではなかったんですが//////」
人の気配のない男子トイレ。
チノパンの股間を粘液に濡らし立ち尽くす船山さんと、ようやく我に帰り立ち尽くす自分…。
転職先の上司、船山昇さんは「大丈夫です」と笑ってくれるけれど、どう見ても最大級に困っている。
こんな時は、年上の僕がリードして落ち着いてもらわなくてはいけないのに、どうしたら良いのかわからない。
転職から三ヶ月。
中途採用の経験者、年齢も上。僕みたいな扱い辛い新人に、丁寧に付き合ってくれたのが船山さんだ。
こんなに短期間で新しい会社に馴染む事ができたのは、みんなこの人のおかげ。
今日は久し振りに休憩の時間が合ったので、外出して一緒に昼食をとった。
そして、オフィスに戻る前に立ち寄ったここで、僕がご迷惑な行動を…っ!
少しばかり浮かれすぎていたんだ、きっと。
船山さんは、いつでも温厚で、大きな声を上げる事もしないし、威圧する事もない。
突飛な話を振っても、きちんと受け答えをしてくれるので話しやすい。多少の無茶も、嫌な顔一つせずに受け止めてくれる。そんな性格のせいか、一人でいる事があまり無い人だ。
優しいからって、年下の彼に甘え過ぎてしまっていたのが今よくわかった。
「大丈夫です」と口では言ってくれても、これはいくらなんでも許してはもらえまい…
ズボンの社会の窓付近に飛ばしてしまった粘着液を、どうやってなかったことにできるだろう。
…間も無く始業時間。動転してしまい、思考回路が働かない。
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