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「まず先に音源審査。んで、十月末のライブ審査にパスした四組が出られる。ダグには確認とったが、お前も出す方向で良いよな?」
「勿論!」
雄介は即答した。
前回のツアーから良いことが続いている。この勢いで上って行ければ、将来的には本当にバンドで飯が食えるかもしれない。飛び上がりたい衝動を堪えながら、雄介はコウへ問い掛けた。
「詳しい日程とかは?」
「まだだ。それよか、まだタツに連絡ついてねえんだ。アイツ最近捕まらねえんだよな」
「じゃあ、俺からも連絡入れてみる」
「おう、俺に連絡よこせって、伝えといてくれ」
「ああ」
了承し、通話を切った。そのままタツへ連絡したが、何度掛けても留守番電話のままで、一晩たった今になっても繋がらなかった。
通学路を歩きながら、ちらりと左手首の時計を確認する。午前八時過ぎなら、おそらく職場にいるはずだ。携帯に出ないのなら最終手段である。躊躇なくタツの職場へ電話すると、応対に出た女性はすぐに取り次いでくれた。
「はい、水谷です」
聞こえて来たタツの声は淡々としていて、いつもより低く掠れている。風邪でも引いたのか、それとも酒を飲み過ぎたのかと訝かしみながら、雄介は低く唸った。
「テメーこの野郎、何で電話出ねーんだよ」
「……は?」
「は、じゃねえよ!」
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