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マケテモ謝ラズ
で、なんにんおくったのですか。
青年はおだやかにたずねた。
白髪の男は表情をかえずいった。
「じゃ、紙にかいてわたしましょう。整理つけるいい機会だわ。」
青年は手帳をだして3月のページをめくる。
つぎ、いつがいいかをたずねた。
「いつきてもらってもかまわんよ。」
整理にじかんがかかるのではなかろうか。
「わすれてないからね。記憶をおこすだけだから。」
といい、
「いまだっていいんだよ。」
といった。
いまでもいい。青年は一瞬、急いた。
はやいほうがいい。
というのは青年の理屈でしかない。
急いてはしそんじる。
青年はひと呼吸いれた。
予定どおり、来月、ふたたびおとずれることにした。
白髪の男は死んでいた。
心臓がわるかったという。
青年は封筒をわたされた。
「畔上さんって、あんたでしょ。」
みしらぬ女性が声をかけてきた。
「きょう、若いこがくるっていってたからさ、ずうっとまってたわよぅ。午前だからっていってたからさぁ。藤田さんにたのまれたのよ。」
右手でOKサインをつくっていた。
青年はそれが金をもらっている意味だと合点する。いくらかきくと、
「あのひとは、かわってるね。」
といって、2万、といった。かのじょは声にはしなかった。
封筒には楷書で青年の名が筆でしるされていた。
なかにあるのはただの紙きれであった。
青年は筆字の端正さと紙切れの造作なしに違和感をもつ。
糸綴じの大学ノートのページをきりはなし縦に3つ折にしたあとがある。
ボールペンで縦罫をいれてあった。
そこには数字がかかれていた。
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