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それから私は、ドアを揺さぶってみたり、様々な箇所を叩いてみたり、体重を乗せてひたすら押してみたり、思い付く限りを試し、また根気強く繰り返した。
しかし、ドアは頑なに開く気配がない。
ぴったりと枠にはまってしまったように、ビクともしなかった。
まるで壁のようにさえ思えてくる。
何をしようとも素っ気なく跳ね返され、むなしく時間ばかりが過ぎて行った。
夕刻を知らせる防災無線のチャイムが聞こえてきてから随分経った。
おそらく日も暮れたろう。
このままではまずい。
お腹も空いたし、喉も渇いた。
まあ、トイレにいるのだから水はいくらでもあるわけだが、できれば飲まずに済ませたいところ。
それに問題は他にもある。
これ以上時間が経ってしまうと、異変をかぎつけて知人が様子を見に来るかもしれない。
最悪の場合、騒ぎになるだろう。
そうなれば、確実に大家の耳にも入る。
もういちかばちか、ドアを蹴破るしかないのか……。
いよいよそんなふうに迷い始めた時、ふいにインターホンの呼び鈴が鳴った。
応えようもないし、気付かれても困るので、あえて静かにしていると、続けざまに何度か鳴らされる。
ついに誰かが訪ねて来たらしい。
大人しく帰ってもらえればいいのだが……。
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