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数カ月前転校してきた男がいる。
朝、何故か彼はいつもギリギリの時間にバスに飛び乗る。公共交通機関である以上、こんな僻地でなければ、彼を苦笑いで待っていてくれる運転手なんていない。しかし当の本人は眠たそうに大あくびをするのだ。
最近この村の人口減少は著しい。
この路線の最後のバス停は私達の目的地でもある。学校の生徒数人しかいないバスはスクールバスの様なものだ。
ガードレールの向こう側は山に囲まれながら小さな川が流れていく。水の流れを遮るように山々がゴツゴツとその行先を阻んでいる。それに負けじと脇を抜けて、岩の転がる道を走り抜けていく水。そのうねりと荒々しさは、都会に住む人々には想像出来ない光景だろう。
最も中学三年ともなれば九年間変わらぬその景色は見飽きているが。ガラスの向こう側で流れていく様子を眺めながら、次第に胸に込み上げてくる「黒い渦巻いたなにか」を川に流して、何とか目的地に辿り着いた。
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