2:黒

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2:黒

なにかを携えたまま教室へと歩みを進める。これを流しきれたことなどない。振り払っても目を逸らしても消えたことなどない。これは私の個性、それは運命なのだろう。これが消える時は死ぬ時だ。 消える時はないが、その黒いもやもやが、色付いた暖かいものに変わる時がある。 朝、彼がギリギリでバスに飛び乗って来る時だったり、昼休みに彼がひょっこり自分の席の前を通りかかった時。今まで経験したことのないような幸福感がそこにあった。すぐに黒く塗りつぶされるまでは、その暖かな毛布にふんわり身体を預けた。
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