其ノ壱

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「菜子ねぇ!鬼ごっこしよう!」 「うん、じゃあみんなでじゃんけんね!」 近所の子達が壬生寺に、鬼ごっこをするために集まる。 私、菜子はたまにこうして子供たちの世話をするため、みんなには『菜子ねぇ』のあだ名で慕われている。 今日は晩夏にしては暑く、家から駆けてきた子供たちの何人かにはもう汗をかいている子もいる。 「あ、そーじにへーすけだ!!」 「そーじ!へーすけ!鬼ごっこしよー!」 子供たちが私の背中越しに『そーじ』と『へーすけ』を見つける。 彼らは壬生寺の近くにある『新選組』の一員だ。 新選組といえば、野蛮で江戸の人間で、恐ろしいという噂だが、子供たちはそんなことを気にせず遊んでいる。 子供たちの親にいい顔をするものは少ないが、私も一緒に遊ぶという理由でまぁ多少は遊んでも…という人が殆どだ。
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