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出会い
彼女に出会ったのは、もう深夜と言っていい時間だった。
月明かりしか無い真っ暗な農道。
いつものように会社から帰宅中、車通りの少ない事を理由に、ランニングしていた時だ。
突然僕の身体を、雷が落ちたかのような衝撃が突き抜けた。
月明かりに照らされた彼女は、真っ白なブラウスに、膝下まであるスカート姿で僕に駆け寄って来た。
『ごめんなさい!大丈夫ですか!』
彼女が道路に倒れた僕に近付くと、香水だろうか…何やら甘い香りが僕の鼻腔をくすぐる。
暗くてはっきり見えないが、細い身体に長い髪だけは認識出来た。
話し方から、育ちの良さが伺える。
僕は彼女に心配をかけまいと、ゆっくり片手をあげた。
『ああ!良かった!本当にごめんなさい!でも大丈夫そうで何よりです。』
彼女はそう安堵の言葉を呟くと、僕に添えていた手を離し、ゆっくり立ち上がる。
顔を上げた事で、月明かりに照らされた表情に笑みが溢れたのが確認出来た。
『では、私は失礼しますね。お気をつけてお帰り下さいね。』
彼女はそう言うと、僕から離れるように歩き出した。
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