惑え惑え罪人よ

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「ドケよ!ドケってんだ!」 疲労と衝撃で自由が利かなくなり始めた腕で、ゾンビを殴り飛ばす。 その数、十二体。 ようやく彼は、目指した相手へと接触する。 「お前だ、お前!お前だけは殺す!銃を盗んだっつって、手錠をかけられたくはねぇからな!」 普段はジャックでも太刀打ちできないのが警察官だが、こうなってしまえばノロマな肉袋。 単体を殺すだけなら、彼にはそれほど難しくはない。 周囲に敵影がなかったらの話だが。 「死ね、ファッキンピッグ」 鉄パイプでアゴを、頚椎が損傷するほどの勢いで打ち上げる。 健全な人間ではありえないほどに反り返った頭は、最早その機能を捨て去っている。 見紛い様のない、即死だ。 「シてやったぜ、豚野郎。テメェのベレッタは、テメェより俺と踊ったほうが幸せだろうよ」 死んだ警察官から銃、予備弾、手錠を奪う。 安全装置を外し、迫るゾンビの頭に狙いを定め、引き金に指をかける。 「さて、試し撃ちといこうじゃねぇか」 新たな主に握られたベレッタが、咆哮する。 咆哮と共に撃ち出された死神は、覚束ない足取りで迫るゾンビの額に穴を穿ち、赤黒い汚泥と共に外へと飛び出す。 「流石は9mm、良い貫通力だ!」 ジャックは嬉しそうにゾンビを撃ち殺していく。 しかし、所詮は素人。 急所への命中率は決して高くはない。 少しずつ増えるゾンビに、彼は次第に押され始める。 一個人が銃を握ったところで、必ずしも状況が良くなるとは限らないのだ。 むしろ銃声により、離れた位置の敵に気付かれ、必要の無い戦いをするハメになる。 「クッソ!ライフルでも持ってこいよ!もっとガンガン撃てるやつ!」 とうとう予備弾を含めた全てを撃ち尽くし、また鉄パイプに頼らざるを得なくなる。 ベレッタやマガジンを放り捨てるような真似はしないが、こうなってしまえば僅かにでも身軽なほうが有効であろう。 「死ねるかよ、こんなところで!」 彼は、まだ諦めない。 最期の時を迎えるまで、抵抗をやめようとはしないだろう。 「そんなに死にたきゃ殺してやるぞ!オラ、こいよゾンビ共!二度目の死ってのを食らわせてやる!」 最前のゾンビを攻撃しようと得物を振り上げた時、彼の姿をハイビームが照らし出した。
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