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突然の輝きに気を取られ、彼の渾身の一撃はその威力の大半を損失する。
体勢は崩れたものの、歩みは重心が前へと移ったために早まり、次の瞬間にはジャックは掴まれていた。
しかし、流石は場慣れしていると言えよう、喉元に左腕を押し当てることで噛み付きを防ぎ、右腕は一度鉄パイプを手放し、下あごをその拳で打ち抜く。
脳が揺れたことで多少は力が弱まり、振り解く余裕が生じる。
続け様に頭部への回し蹴りを決め、遂には間合いを話すことにまで成功した。
「危ないとこだった……。さて、あの車は一体なんだろうな?」
自身を照らす光源に目を向けると、そこにあるのは大型のキャンピングカー。
そして何者かが一人、そこから飛び出してきた。
その人物の手には拳銃が握られており、銃口はこちらを向いている。
「伏せろ!」
その人物は声を張り上げ、ジャックはそれに反応を示す。
それと同時に彼は発砲、ジャックの真後ろにまで接近していたゾンビの頭を正確に打ち抜いた。
「こっちだ!早く乗り込むんだ!」
彼に促されるまま、ジャックはキャンピングカーへと乗り込む。
明かりの点された車内は至るところに散らかった備品のために清潔であるとは到底言ない。
そして彼と自分の他にも生存者が二人だけ、乗り込んでいた。
「危ないところだったな。適当なところに掴まるんだ。いいぞ、出してくれ!」
「おうとも!しっかり掴まってねぇと、連中の仲間入りだぜ!!」
運転席から男の声が響いたかと思うと、猛烈な力が体にかかり始める。
そして何かがぶつかる音、酷い揺れが車内を襲う。
そしてキャンピングカーは大きく回転し、車内は備品が飛び交う修羅場となった。
「いつもの事ながら、キツいターンをかましてくれるな。私が舌を噛んだ回数分、君の頭を撃ちぬくと言うのはどうかな、ドグマ」
「吼えるなよマイケル!テメェは一度だって噛んじゃいない、そうだろう?」
「ご明察、転職先はうちの事務所にするといい。名探偵になれるぞ?」
エンジンが唸り、方向を真逆へと変えたキャンピングカーは、ゾンビを跳ね飛ばしながら道を行く。
「ソイツはゴメンだぜマイケル。俺は誰よりもコックが似合う男、違うか?」
「そう思うなら少しはマシなパスタでも作ってみろってんだ」
平然と軽口の応酬を繰り広げる二人に、ジャックの混乱は深まるばかりだ。
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