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しばらく進むと、キャンピングカーは速度を落とし、平常時と変わらない速度を保ち始める。
だが、ほぼ無意味となった信号はあっさりと無視をするようだ。
「あの……とりあえず、助けてくれてありがとう。で、その、アンタらは誰で、これからどうするんだ?」
ジャックは戸惑いつつも、彼らに問う。
救われたとはいえ、周囲はこんな状態だ。
外に居るよりはマシだろうが、彼らと共に居るのが安全であるとは限らない。
「済まない、紹介が遅れたようだ。私はマイケル、姓はブール。職業は探偵で、運転手の彼とは腐れ縁だ」
「俺の冤罪を晴らす手伝いをしてもらってからな!俺はドグマ=ガイアース、さっきの話を聞いてたな?俺はコックだ」
運転手と、ジャックを救った男が自己紹介を進める。
どちらも、幸い悪人ではなさそうだ。
「俺はジャック、歳は18で職業は……街のチンピラ」
「ほぉ、君がジェネラルジャックか!有名だよ、喧嘩が強いことで」
「将軍扱いされるほどじゃねぇし、なんの自慢にもならねぇよそんなもの」
マイケルはジャックのことを知っているようで、口ぶりからそれなりに名が売れているようだが、本人にその自覚は全く無い。
「これから俺達は、安全な場所を探して移動する。今は何の情報もねぇ、軍やサツで鎮圧できるかどうかすらも分かりゃしねぇ。……だが、希望は捨てねぇこった。俺だって諦めずにすがったお陰で、今がある」
「フッ……揉み消したはずの証拠を突き止められたときの連中の顔、あれは最高だった」
運転席から見えるドグマは大柄のスキンヘッド、話し方は荒っぽいが危ない人間とは思えない。
マイケルはというと、紳士と形容すべき出で立ちだが、ドグマとのやり取りの所々で本性が見え隠れしている。
だが、彼も無法者の類いではなさそうだ。
ジャックは車両後部に座っている二人にも声をかける。
一人は自身より年下に見える少女、もう一人は暗い顔をして俯いている青年だ。
「俺はジャック、初めまして」
「あ、は、はじめ、まして……。あの、ジェシカと……言います」
「……クリス」
少女は震えながら、青年は俯いたまま答える。
クリスの態度が気に触ったが、状況を考えるとここで事を荒立てるのは得策ではない。
ジャックは感情を押し留め、状況の整理に勤しむことにした。
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