消えゆく定めの平和

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そしてこれは、ジャックたちの拠点から少し離れた場所での話だ。 「どうしたんだろう、あのお猿さん」 自宅の窓に映るそれは、紛れも無くサルであった。 道路を恐れることなく歩いているそのサルは、全身が傷だらけであった。 道路には、血の跡が点々と続いている。 「そう言えば、警察からのインフォメーションが来てたっけ。危ないサルが森から出てきたから家から出るなーって」 少女は携帯端末を手に取り、確かめる。 間違いない、アレは件のサルだ。 「引っ越してきて早々襲われたくないし……一応、通報したほうがいいよね……」 一人暮らしを初めて間もない非力なこの少女に、凶暴化した野生動物への対抗手段は無いに等しいと言えるだろう。 であれば、一刻も早く然るべき組織に連絡し、対処されるのを待つのが最善というものだ。 「それにしてもあのお猿さん、一体なんであんなに傷だらけなんだろう。というかなんで、あれで……生きていられるの……?」 少女は、決して生物に関する知識や、医学的な知識に関しては明るくない。 だが、片耳が削げ落ち、四肢の大半の筋組織が剥き出しになり、更にそこからウジが湧いている様を見れば、生きているのが不思議に思えるのも無理はない。 「と、とにかく通報しておこう!シロウトの私が考えても、仕方ないよ」 少女は電話をかけ、事の詳細を警官に伝える。 その間も異様なサルは、道路をゆっくりと、虚ろな眼を向けながら歩いていた。
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