第2章

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私の家は、祇園にある小さな旅館を経営している。 旅館の仕事が忙しくなるのは、たいていが朝と夜だ。 昼間は仕込みなどはあるものの、少しは自由な時間がとれるようで、私が京都で暮らしていた頃も、お母さんは可能な限り、家で私の帰りを待っていてくれた。 「懐かしいなぁ」 あの頃を思い出し、声を漏らした私に、 「そやな。高校生の時も灯里は、大声でただいま言うてたな」 お母さんも違うところに懐かしさを感じていた。 お母さんと話していると自然と京都弁へと戻っていく。 京都弁を話し出すと、途端に子どもの頃の自分に戻るようだ。
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