第2章

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玄関を上がると、目の前に木造の階段が見える。 二階へ続く階段を登りきって右手に曲がると、いくつか部屋がある。 私はその部屋を通り過ぎ、通路の突き当りにある自室へと向かう。 一人っ子の私が大学進学を機に家を出ていったせいで、この家は活気をなくしていないか、少しだけ心配していた。 けれど、実家はひっそりと息をしている。父と母が暮らしている気配がある。 私は、懐かしさを感じながら廊下を歩いた。 お父さんの部屋の扉が開けっ放しになっていた。 物理学の教授をしているお父さんの部屋には、大きな本棚が備え付けられてあり、そこには、聞きなれない題名の分厚い本がぎっしりと並んでいる。 好奇旺盛だった小学生の私は、一度だけその本を覗いてみたことがあった。 開いてみたものの、並ぶ日本語が難しすぎて、内容が全く理解ができずに、すぐに本を閉じた記憶がある。 『お父さんの仕事って、よくわからない』 当時の私は、そんなことを思っていた。 それを直接父に言ってしまい、落ち込ませたこともあったな……。
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