第2章

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拓斗は世界で一番好きな食べ物はかき氷だといつも言う。 親友の菜花、拓斗、私が集まると、よくかき氷屋のかき氷を食べに行っていた。 だから、この日、かき氷を食べた、と書かれていても納得できる。 けれど……。この日の日記にも不思議な空白がある。 誰かがいたような書き方だった。 『京都の町が初めてだという  は、八坂の塔を見て感動していた』 八坂の塔を見て感動する友達なんて、もう地元にはいないだろう。 東山の麓に立っている古い都の印は、私たちにとっては見慣れた景色の一部だった。決まった場所に小学校が建っていることと同じことくらいに。 わざわざ小学校を見て感動する人がいないように、生まれた時から祇園に住み、外の世界では暮らしたことがなかった私たちは、この景色にいちいち感動したりしないのだ。
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