第1章

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私の悪い癖を怒りもせずに聞いてくれる彼、奏はとても優しい。 彼の隣は居心地がいい。 この人を好きになって本当によかった。 「夢のこと」 「夢?」 「最近、よく見るんだよね」 「どんな夢?」 「誰かと何かを話しているの」 「わかりにくいな」 そう言って、彼は綺麗に微笑んだ。 「わかりにくいでしょ?」 「うん。すごく」 「だって、私にもわからないもの」 夢の中で見る世界はいつもリアルで、ここが自分の生きる世界だと信じて疑わないのに、目覚めるとそれは遠い記憶になり、やがて消えていく。 それはどんな夢でも同じだと思うけれど。 だから、気に留めてもいなかった。 夢を覚えていられない、それは普通のことだと思っていた。
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