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「場所は?」
隣を歩く彼がそっと言った。
「場所かぁ……」
私は、眉間に皺を寄せて考える。場所を思い出すなんて、考えたこともなかった。
「それもわからない?」
「うーんと」
「何が見える?」
彼が優しく問いかけた。
彼の落ち着いた口調には魔法がかかっているといつも思う。
抱き上げるように、すくいあげるように、私の話を聞いて、時に導いてくれる。
北風がスカートをひらひらと動かしている。雪がちらつき始めた。
夢を思い出したくなった私は、その場に立ち止まった。
そんな私を見て、全てを悟ったかのように静かに微笑んだ奏は、私の手を取り、少し歩いて、誰もいない建物の軒下に身を寄せる。
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