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『なんでこーへんの! ずっと待ってんのに!』
高校生の私は、彼に詰め寄って言う。
男の人の顔には、影がかかり、顔はよく見えない。
見えているのは、うっすらと開く唇から下の彼の容姿だけだった。
『灯里は……相変わらずだな』
『へ?』
首を傾げる私に、彼は口角をあげて微笑む。
夢の中で見る映像は、何度も再生され伸びきったテープのように、色褪せて、ところどころがぼやけて見える。
そして、その夢は時々ぶつりと途切れては、また戻ったり、別の場所を映し出したりする。
いつもそうだった。
最近の私がよく見る夢は、同じ場所を、続くストーリーを長く追えない。
だから、どんな夢を見ていたのか、覚えていられないのだ。
とても短い、一瞬一瞬を切り取ったかのような夢を繋ぎ合わせようとするも、私はその記憶を保てなかった。
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