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「でも、それはイサオちゃんの責任ではないだろう」
「そうだが・・・。信吾ちゃんと同級生だった良太。馬鹿息子のせいで秋田に転向する羽目になったしな・・・」
「でも、良太は元気にしているんでしょう?」と信吾が聞く。
「さぁ・・・。息子と離婚してから、最近では全く音沙汰無しだよ」
信吾はその一言を聞いて、少し残念な気になった。
信吾と良太は同じ小学校時代を過ごした仲だが、両親の離婚をきっかけに、母親に連れられて母親の実家のある秋田へ引っ越して行ってしまった。
それから何年かは手紙のやり取りをしていたが、それも少なくなり、今では音信普通になっている。
「この商店街から蕎麦屋松天屋が無くなるのは寂しいな。万松寺の住職には話したのかい?」
「お寺さんには数え切れないほどお世話になっているからな。礼ちゃんに話すよりも先に伝えたさ」
「そりゃ、さぞかし残念がっていただろう」
「そりゃあな。あのお寺があってのウチだから」
二人の会話はそれきり途切れた。
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