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階段上の座席を降りて一階のロビーに出た。
お弁当。
無駄になっちゃったなー。
どこか、近くの公園で食べて帰ろう。
このまま捨てられちゃうのかな……私。
唇噛んでないと、今にも泣きそうになる。
俯き気味に歩く。
不意に誰かとぶつかった。
「あ、ごめんなさい」
大きい子。
選手かぁ。
礼人の高校のチームのユニホームに似てるかも。
謝ってまた歩き出そうとして、聞いた名前を彼女が口にした。
「あ、の。もしかして、曳地先生の彼女さん、ですか?」
その声を合図に、私は長身の女の子達に囲まれる。
まとまると、迫力あるなぁ。
感心して、返事が一歩遅れる。
「彼女さん、です、よ、ね?」
今度は窺うように聞いてきた。
彼女、だったと過去形で答えた方が良いのかな?
返事を戸惑って笑って誤魔化すと、一人だけ黒髪の長い、後ろで一つ縛りしている娘が口を開いた。
「ご婚約、されたんですか?」
いや、だから、どっちかというと振られましたが?
それは言葉にできず、軽く否定しておく。
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