321人が本棚に入れています
本棚に追加
「ご婚約、されたんですか?」
自分で発した言葉に、ショックを受けた。
彼女は誤魔化してたけど、それは婚約指輪だと、すぐに分かった。
そっか、先生結婚しちゃうんだ……。
恵美里先輩が彼女に声を掛けるより前から、彼女が先生のスマホの待ち受けの人だとすぐに気が付いた。
先生とは似合わない。
いつも先生のスマホの画面が見える度にそう思っていた。
先生はもっと芯の強そうな人を選ぶと思ってた。
だから、先生が彼女を好きだなんて、想像できない。
「お前ら全国行けたら、俺、プロポーズしようかな」
って、冗談混じりに言ってたけど、決勝もまだなのに、随分なフェイント。
お陰で私、まだ心の準備できてなかった。
失恋の。
これから決勝だっていうのに、どうしてくれるのよ、ばか。
仕方ないから、お祝いに全国行けるよう頑張ってあげる。
だって、どうしようもないじゃない。
お弁当届けたときの、あの顔見ちゃったら。
諦めるしか無いじゃない。
体育館の玄関で人の目も気にしないで抱き合っちゃって、すっかり二人の世界。
先生がそんな事するなんて。
そんな優しい目で、彼女の髪に触れるんだね。
あーあ、私の片想い、想いも伝えずに終わっちゃった。
……終わっちゃった。
私だって、先生の事、好きだったのに、なぁ。
神様の……ばか。
責任とって、次の恋は、絶対に……両想いにしてよね。
了
最初のコメントを投稿しよう!