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◆誘い文句・冬
冬のスキー場ではゲレンデマジックなんてものがかかっていて、いつもより人を魅力的に見せる、なんて話もあるが、そんなことは関係なく冬の岩瀬は年を重ねる毎に綺麗になっていると神通は思う。
「今年もライトアップには気合が入ってるんです!」
ホワイトモカの入ったクリスマス柄のタンブラーを両手で弄びながら嬉しそうにそう報告してくる岩瀬に対し、神通は気持ちと裏腹に「ほけ」とつれない返事を返す。
「岩瀬んとこは毎年毎シーズン頑張っとんもんねー。今年も花火やんがけ?」
一方で松川はといえば(神通が思うにどう考えたってお邪魔虫なのにさも当たり前のように二人の間に座って)そんな風に何も考えてないような当り障りのない言葉を返す。
「はい、頑張ってるのはわたしじゃなくって、企画してくださるみなさんなんですけど、でもおかげで毎日楽しくて!」
それで、と続けて。
「あの、よかったら、一緒に見に行きませんか」
冬の花火も素敵ですし、と去年もその前にも聞いたような誘い文句。花火なんて見慣れているだろうにと喉元まで出かかったが、さりとて是非と即答するのも格好がつかない(と神通は思う)。
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