離れたくないのに

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「ごめんなさいっ……ごめんなさいっ」 何度この言葉を発しただろうか。 涙で顔を濡らしながら、何時間も叫び続けたせいで掠れてしまった声を振り絞り、数え切れないほど謝罪の言葉を発する。 けれど、目の前の彼は耳を貸さず、ただ怒りで顔を真っ赤に染め上げるだけだった。 「だって……だって俺、優吾と離れたくなくて……っ」 自身で傷つけた手首を止血しながら、彼の元へ歩み寄る。 自宅の近くで彼が見知らぬ女性と話しているのを見かけて、不安が煽りこんな事をしてしまった。 いつも感情が押さえられずに彼に迷惑をかけてしまう。 これでは逆に離れていってしまうだけだというのに。 「優吾……ねぇ……俺の事嫌わないでっ……」 彼の額には今にもはち切れるのではないかというほどの青筋が浮かんでいる。 整えられた凛々しい眉の間には皺がより、切れ長の眼はいつもよりも眼光が鋭く殺意すら感じる。 「ねぇ……」 また一歩、彼に歩み寄った時だった。 無言のまま、ぴくりとも動かなかった彼が手を上げた。 (殴られるっ!) そう思い身を縮めた俺を、彼は殴るわけではなく引き寄せ、優しく抱きしめた。 「嫌わねぇし、離れても行かねぇよ。なのに手が届かない所に離れて行こうとしてんのは明じゃねぇか」 彼の声が微かに震えているのが分かった。 (そっか……不安なのは優吾も同じなんだ) そう思うと、少し心が軽くなったような気がした。 「ごめんなさい……俺……」 「謝らなくていい。だから、もぅこんな事すんな。俺の前から居なくなるような事……」 「うん……うんっ……」 _end_
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