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「――起きて、琥珀(こはく)。」
「...ん...」
「琥珀、遅刻するよ。」
「.....はぁい。」
耳に心地良い声に起こされてパカリと目を開けると、美麗な顔がこちらを覗きこんでいた。
――うわぁお、朝から眼福。
アクアマリンのような瞳に陽光が当たって、キラキラ輝いている。
「おはよう、琥珀。」
「....おはよう、浅葱(あさぎ)。」
目が合うと、アクアマリンがヘニャリと崩れた。
「琥珀、もうすぐ7時半。学校に遅れるよ。」
「だーいじょうぶ! 速攻で支度するから。」
私は勢いよくベッドから起きると、寝室から私室へと飛び込んだ。
クローゼットを開けて、目に入った服を適当にヒョイヒョイと見繕う。
と、後ろから腕が伸びてきた。
「琥珀、そのパンツ履くなら、こっちのブラウスにしなよ。」
パサリとベージュのブラウスが落とされる。
「ん、分かった。」
私は着れれば何でも良い派だけれど、浅葱はコーディネートに気を遣う質(たち)らしい。
浅葱の案を受け容れて今日着る服を決めると、背を押して浅葱を部屋から追い出した。
「え、何で?」
慌てたような表情で浅葱がこちらを見る。
「私着替えるから出てて。」
「着替えるのは分かるけど、何で? ―僕、琥珀の夫だよね?」
――そう、浅葱・イーストンは私の旦那さまだ。
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