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「……あの、少しいいですか?」
離れていく電車を見ていると、女の子に声を掛けられた。
「えっ、私ですか?」
「はい。少し聞きたいことがあるんです」
その子は、私と同じ学校の制服を着ていた。クラスメイトではないし、恐らく面識も無いから後輩だと思う。
「なんですか?」
「……昨日の話の続きって聞いてますか?」
「……えっ?」
意味がわからなかった。
後輩とはいえ初対面の人からされるような質問じゃないし。
「……えっと、あのあと田中さんという方の返事は?」
「えっ?」
「……実は、昨日の帰りに先輩達の話を聞いてしまって……」
彼女が言うには、昨日カナコが話していたタカハシ先輩が田中さんに告白したという話を後ろを歩いていて聞いてしまったらしい。
失礼だとは思いつつも、カナコの話に聞き入ってしまったのだとか。
昨日も今日と同じで結末は聞けず終い。気になって仕方なくてカナコに聞こうとしていたらしいけど今日は今日で話が気になって割り込めなかったらしい。
「そうだったんだ……」
「……盗み聞きするつもり無かったんです。でも気になってしまって」
「あ、いいの。カナコの声って無駄に通るしね。でも、えっと……ごめんなさい」
謝ることしか出来なかった。
後輩の彼女には申し訳ないけど諦めてもらうしかない。
二年余りの月日の中で、私も学んだ。
――カナコに質問する暇なんて無いということを。
だから私も知らないし、答えてあげられない。
カナコが自ら話してくれない限り、真相が明かされる事はないのだから。
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