気にしたら負け

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 駅のホーム。  学校の授業が終わって私は家に帰る途中。 「……なのに田中さんが休んじゃって、ほんとに大変でさー」 「そうなんだ、大変だねー」  いつも一緒に帰るカナコの話に相槌を打つ。  入学式で隣になったのが縁で友達になってもう三年目になった。今年はクラスが別々になっちゃったけど。  カナコはオシャベリが好きで、いつも学校から駅までずーっと話し続けてる。  たまに寄り道する事もあるけど、カナコがアルバイトをしているからシフトが入っている日は駅まで直行ルートだ。  カナコは「大変だ大変だ」っていうけど、アルバイトに向かう道中は話が止まらないくらいアルバイト先の事ばっかり話してくれる。  いつも聞き役だけど、カナコは話し方が上手で全然苦にならない。  話のネタは大体アルバイト先の人間関係。  顔も知らない人との事ばっかりだけど、カナコが楽しそうだし聞いていて面白いから別に文句は無い。 『~~まもなく、二番線に電車がまいります。足元にご注意ください』 「……だったの。だからサトウ君が注意したんだけと……」 「……そ、そうなんだ」    アナウンスが流れてもカナコの話は一向に終わりをみせなかった。 「……だけど、タカハシ先輩がどうしても我慢できなくなって……」 「うんうん。それで?」  話を聞いているといつのまにか夢中になっている自分がいる。 「あ、じゃあね。また明日ね~」  なのに、カナコは電車に乗ってしまった。 私が乗るのはカナコとは逆方向。ここで私たちはお別れになる。 「あ、……うん。バイバイ」  ……続きが気になる。でも言葉にはしないまま、ドア越しに手を振ってくれるカナコに手を振り返して見送った。
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